『写楽 閉じた国の幻』島田荘司
初めて自分で購入したミステリー小説「占星術殺人事件」の作者が島田荘司でした。
御手洗潔(みたらい きよし)というふざけた名前のカリスマ的天才が主人公のこの作品。
購入当時、中学生だった私には難しい文章でしたが、引き込まれるように一気に読み切った記憶があります。
最近は前ほどミステリーを読まなくなっていたのですが、島田荘司が写楽の正体の謎について書いているという新聞の書評を見つけたのをきっかけに、本作を手にとりました。
この作品は30年ほど前に写楽の浮世絵を見た作者が「これは歌舞伎を知らない人が描いた戯画なのではないか」と感じたところから始まったらしいです。
冒頭、主人公の子どもが回転ドアに挟まれて死亡するという件があり、数年前の六本木ヒルズで起こった事故を思い出させます。
幼い子どもを亡くすという不幸のどん底にいる主人公が見出した「写楽の正体」という幽かな希望を生きる目的にして話は進む【現代篇】と写楽の浮世絵がどうやって世に出たかを描いた【江戸篇】の2部構成になっています。
リズムがあって、力のある文章はさすが島田荘司!という印象で、時間を忘れて読んでしまい、深夜2時まで没頭してしまいました。
個人的にはこの具体的な事故が頭に浮かぶような子どもの死を描いた「現代編」はあまり好きではないですが、「技術の伝承」や「日本とオランダ」という暗示のためには仕方なかったのかな…。
それにしても、あとがきで作者がページが足りなかったとの言い訳を書いていることでもわかるように【現代篇】はすっきりとした決着がついておらず、消化不良の感は否めません。。。
そんな不満はありつつも、この作品は面白い!
鬱鬱とした序盤に挫折することなく、ぜひ最後まで読んでいただきたい作品です。
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2011年11月16日 10:53 AM